WHAT’S
HIGASHIHIROSHIMA東広島市を読み解く4つのキーワード
ビジネス
INTERVIEW
国内で初めて加工から殺菌まで非加熱での工程を実現した「Wコールド製法」。株式会社グランゲートはこの斬新な手法を使って、おいしさや栄養価を損なわず日本の農作物を加工しようとする“第6次産業”の新たな挑戦者だ。女性に人気のコールドプレスジュース、業務用スムージー、美容サプリメント……。大分県に本社がありながら、新規事業の拠点として東広島市を選んだ代表取締役社長・岡庭真一(おかにわ・しんいち)さんに話を聞いた。
移転までの経緯
風味や栄養素を劣化させない
超高圧殺菌技術が東広島にあった
私はもともと大分県で「グランカフェ」という飲食店を経営していたのですが、新たに農産加工事業に乗り出すことを決めたとき、「超高圧(HPP:High Pressure Processing)殺菌」という技術に出会ったんです。日本では加工食品の流通のため殺菌処理が義務付けられていて、熱を加える加熱殺菌が大半でした。ただ、それでは原料の風味や栄養素が劣化して、商品の質が落ちてしまいます。しかしHPP殺菌は圧力のチカラで殺菌するため加熱の必要がなく、農作物の味や香りを損なわずにパッケージ化できます。この製法で作ったリンゴジュースを飲んでもらうと、みなさん口を揃えて「これ、リンゴジュースじゃなくてリンゴそのものだ!」と言われます。
そのHPP技術の中で食品に転用できる機械があるのは日本でわずか2ヶ所だけ。その1つが広島市に本社を置く株式会社 東洋高圧でした。東洋高圧さんと話をしているうちに、協業でやらせてもらえることになり、東洋高圧さんの八本松工場(東広島市)のすぐ近くにラボを構えることを決めました。そこから広島県と東広島市のサテライトオフィス助成制度を知って応募。2020年11月、大分県から2人の従業員を異動して東広島市に広島工場をオープンしました。
移転して思うこと
レモンやブドウなど農産物が豊富
人口も増加中でまちに活気がある!
はじめは東洋高圧さんの工場のそばということで東広島市を選んだのですが、いざ来てみるとここは農作物の加工ビジネスをする上で非常に適した場所だと感じました。まず南には瀬戸内海、北には日本海。柑橘類がある四国も近く、隣の岡山県は白桃やマスカットで有名です。広島県内にもレモン、近隣の世羅町には梨やブドウなど豊富な種類の果物があります。地元の生産者の方とコラボレーションしやすい環境ですよね。さらに加工後の物流を考えても、広島は西日本の中心地。アジアの玄関口である福岡空港・博多港、そして関西空港にも近いんです。アクセスの点からも優位性を感じます。
また、東広島市は広島大学を中心とした学生のまち。今後、学生たちと一緒にレシピを開発するなど“産学官”でタッグを組むことも可能です。そして何より心強いのが、まちの人口が増えていること!いま日本全国で人口が減少していますが、東広島市は数少ない人口増加中のまち。人が増えるということは人が集まるだけの魅力があり、パワーや活気があるということ。しかもその多くは学生や若い世代という新しいものに敏感な人たち。私たちもこのまちと一緒に成長していけると感じました。
今後の展開
年内に商品が味わえるカフェを増設
生活の拠点を東広島に移すことも考えています
まず年内に今の工場の建物内に飲食ブースを増設する予定です。ショーケースを置いて自社製品を販売し、コールドプレスジュースやスムージーを飲めるようにします。それと超高圧で熟成させた牛肉を使ったローストビーフや、非加熱ドレッシングを使ったサラダなどが楽しめるランチも提供したいです。店舗を拠点に地元の方々にWコールド製法を知ってもらい、商品の情報を発信できればと考えています。
広島や東広島のブランドで新たな商品を開発したいという想いもあります。前述したように東広島市近辺には果物や野菜の生産者が多く、その方々と一緒にモノづくりを進めていきたいです。特に東広島市は日本酒が有名なので、お酒とのコラボも面白いですね。カクテルの割り材として我が社のフレッシュな果汁を使ってもらうなど、食品業界同士のコラボも面白いと思います。
いま我が社に必要なのは広島の“仲間”。ウチは小ロットでも対応可能なので、ウチが中心となって産学官をつないで色々試してみたいとも思います。あと、個人的にはこの事業が軌道に乗ったら家族を広島に呼んでもいいかなと思っています。東広島市は子育て環境もいいし、“広島の人”になるのも悪くないかな、と思うんです。